こんにちは!ドイツのレーゲンスブルクに留学している木田勇哉(Instagram)です。
今回、留学期間中にドイツのインダストリー4.0(第四次産業革命)を積極的に進めているTRUMPFとバイエルン州経済産業省に取材してきました。
「インダストリー4.0って何?」「導入されるとドイツの物作りはどう変わるの?」「もうドイツ企業では導入されているの?」
というインダストリー4.0の基本的な事から実際に企業や行政に訪問してきて学んだ事をまとめてみました。
そもそもインダストリー4.0とは何なのか?

インダストリー4.0を紹介する前に「そもそもインダストリー1.0〜3.0って何だったんだ?」と疑問に思われる方も多いと思うので、インダストリー4.0以前の製造業について簡単に振り返っていきます。
インダストリー4.0以前の産業革命
- インダストリー1.0:1700年代半ばに英国で水力や蒸気機関が製造業などに用いられる様になり、工業面だけではなく機関車など輸送技術の発展に大きく貢献する。
- インダストリー2.0:1800年代後半になると、燃料が石油に代わり始めドイツでは軍事や化学分野で大きな発展を遂げ、このころにガソリンエンジンが発明される。
- インダストリー3.0:1900年代後半にはコンピューターの急速な普及と発達により、生産性の効率化や自動化が起こる。このころに原子力エネルギーも発展する。
次に「インダストリー4.0」ですが、これは一言で表すとIoT(アイオーティー)やAI(人工知能)などの情報技術を駆使して自動車など製造業の業務改善、生産性向上を図る事をさします。
IoTとはInternet of Thingsの略で「物のインターネット」という意味で、あらゆるモノがインターネットと繋がる事をさしています。そのIotによって収集された膨大なデータをビッグデータと呼びます。
説明だけでは分かりにくいと思うので、製造業の工程にインダストリー4.0採用した場合の様子を以下にまとめてみました。
- 製造機械が直接インターネットに接続され、リアルタイムに情報収集を行う。
- Iotを通して沢山の情報(ビッグデータ)が収集される。
- ビッグデータをAIなど人工知能が分析・解析を行い、自立して生産効率の改善を行う。①に戻る。
このようにインダストリー4.0では自立して生産効率の改善をリアルタイムで行う事ができるようになる他、製造のコスト削減や安全性の向上、商品の品質安定やに繋がると期待されています。
文章で説明するのはなかなか難しいので、オランダの会計事務所KPMGが紹介する動画は、英語ですが視覚的に初めての方でも理解しやすくおすすめです。
と、ここまでがインダストリー4.0を大まかな説明となります。
それでは次に僕がドイツに訪問したきっかけやインダストリー4.0がどの程度進行しているのか、また官民の取り組みなど実際に企業や行政を訪問した時の様子を紹介していきます。
僕がインダストリー4.0関連の企業や行政に訪問したきっかけ

Bayerisches Staatsministerium für Wirtschaft, Landesentwicklung und Energie(=バイエルン州経済産業省)に訪問した時
僕がドイツの企業や行政機関に見学に訪れた理由は2つあります。
1つ目は、大学でドイツ政治について学んでいる過程で、インダストリー4.0を知りましたが、なぜ民間と行政が一体となってインダストリー4.0を推し進めているのか、ということについて興味を持ったからです。
インダストリー4.0は、先ほども述べた通りあらゆるモノをインターネットでつなぎ生産性を向上させるためのプロジェクトです。
ドイツがこの政策を推し進める背景は様々な事情がありますが、特にドイツ国内にて少子高齢化が進行していることから個々の生産性を上げる必要があること、そしてドイツの主要産業である製造業がアメリカや中国との競争にさらされている国外事情があります。
日本と同じ少子高齢化が進むドイツ。日本でも、「生産性向上!」「働き方改革!」が叫ばれていますが、海外の事情はどうなのか。課題も数多く指摘されているインダストリー4.0を、ドイツはどうやって実現させ、何を目指し、そして将来の社会をどうしていきたいのか。
実際にインダストリー4.0を推し進めているドイツ企業の方のお話を聞いてその実態を知りたい。そんな思いで企業訪問をしたいと思いました。
二つ目の理由としては、単純に奨学金が下りないからです。(笑)
自分は「やる気応援奨学金」という大学の奨学金制度を使ってドイツに来たのですが、奨学金を獲得するためには、「語学学校+独自の課外活動」を行うことが必須だったからです。
語学学校の様子は次のリンクで紹介しているので興味のある方は是非よんでみてください。
30社連絡してようやく…ドイツの企業TRUMPFとバイエルン州経済産業省
「ドイツに行きたい!」という思いが強かったので、アポ取りを頑張りました!30社くらいに連絡して、そのうちの1社、1行政機関から返信をいただくことができました。
TRUMPFというスマートファクトリーを推し進めている企業と、Bayerisches Staatsministerium für Wirtschaft, Landesentwicklung und Energieというインダストリー4.0を実現するために企業、行政機関、そして大学などの研究機関を調整している、バイエルン州の経済産業省にあたる機関を訪れました。
ドイツ企業とバイエル州経済産業省に訪問して感じたインダストリー4.0への取り組み

TRUMPFの企業訪問をした際に対応をしてくださったステファンさん
私が今回訪問させていただいたTRUMPFはスマートファクトリーを推し進めています。これはなんなのか。具体例を挙げると、世の中に走っているすべての車を、インターネットで管理することで車の状態がすべて把握できるようになります。
例えば、車のタイヤが劣化しているとか、エンジンの調子が良くないとかなど、これができることで、事故を未然に防いだり、リコール対象の車がモニター画面一つでばっちり把握できるようになるなど安全性向上に貢献する事ができます。
ただし、こうした高度な技術を個々の企業が個別に開発していてはあまりにも膨大で効率が悪いのが現状です。
そのため、インダストリー4.0はドイツの国家プロジェクトという形で進め、企業と行政はもちろん、ドイツIT・通信・ニューメディア産業連合会(BITKOM)、ドイツ機械工業連盟(VDMA)、ドイツ電気・電子工業連盟(ZVEI)の3つの業界団体、大学や研究機関、労働組合などの様々なステークホルダー(関係者)が参加しています。
こうした諸機関を調整(=コーディネート)しているのが行政機関ですバイエルン州経済産業省がそれにあたります。
取材対応をしてくださったヘンドリックさんが
「現在、各企業が製造過程のデジタル化の環境整備を積極的に行っている。例えば、各企業への資金援助をしたり、インダストリー4.0の戦略策定などインダストリー4.0を実現させるための円滑油の役割をしている」
と仰っていたように、行政と企業が一体となって進めている様子が伝わってきました。
2つの機関への取材を通して私が感じたことは、取材対応をしてくださった2人の、インダストリー4.0に対する熱意です。特に取材対応していただいた二人ともが
「インダストリー4.0を実現させることがドイツ社会にとって有益になる。だからインダストリー4.0を推進する」
と意気込んていた事はとても印象に残っています。
各々の役割は異なるけれど、目指すべきゴール、すなわち「ドイツ、社会をインダストリー4.0によって良くしていく」というように私は感じました。
まだまだあるインダストリー4.0の課題
ただ、インダストリー4.0を実現させるにあたって課題は山積みです。
2つの機関が、異口同音に言っていたのが「情報管理」と「より多くの企業にインダストリー4.0に参加してもらうためにはどうすればよいか」ということでした。
インダストリー4.0の神髄は、「インターネットを用いて物と物をつなぎ、業務改善・効率化を実現させること」です。インターネットを用いる以上、膨大な個人情報を取り扱うことになります。ゆえに膨大な量の情報をどう守るのか、ということが課題になります。
また、現実には、資金や経営者の判断でインダストリー4.0に対して消極的な企業も多数存在しています。
日本と同じように、全企業の大多数を占める中小企業の積極的な協力がなければインダストリー4.0の実現は困難です。というのも、インダストリー4.0はドイツの国家プロジェクトなのだから。
インダストリー4.0に実際に取り組んではおり、実態はある(スローガンで終わってはいない)がまだ十分形にはなっていない
これが、私が2019年2月にドイツへ来て感じた感想です。
ドイツにおける一部の機関ではインダストリー4.0が形になっているが、それがドイツ全土で、しかも誰が見ても明らかなような状態で形にはなっていなかったです。
インダストリー4.0を実現するにあたって、立ちはだかる課題をドイツはどう乗り越えていくのか。ドイツの挑戦に目が離せません。TRUMPFの企業訪問をした際に対応をしてくださったステファンさんは、
「インダストリー4.0が実現することで、ドイツ社会をよりよくすることができると信じている」
とおっしゃっていました。
そうした執念をもって仕事をされておる人の話を聞けたことも、今回の留学の収穫です。インダストリー4.0は、ドイツにとっての挑戦であるとともに、あらゆる機関(ステークホルダー)が利害関係を乗り越え、「インダストリー4.0実現」という共通の目的を達成するためにドイツ国民・機関が一体化できるか否かが試されていると思います。
引き続き、インダストリー4.0には注目していきたと考えております。
著者:Yuya Kida(instagram)(twitter)/編集:井上誠志
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