「実践に力を入れている単科大学(Hochschule)はこんな大学」:ドイツの大学で経営学を学んだ私が留学を振り返ってみて

皆さん、こんにちは。日本で国際文化学を専攻している、Aya(instagram)です。

ドイツ留学を振り返るというタイトルから、いきなりオランダで撮影した写真から始まっていますが、プロフィール用の良い写真が中々見つからなかったのでご容赦ください。。。

そんな私ですが、2020年の2月までの約1年間ルートヴィクスハーフェン経済大学(Hochschule für Wirtschaft und Gesellschaft Ludwigshafen)に留学していました。日本の大学と専攻は異なり、こちらの大学では経済学や経営学の講義を中心に英語で履修しており、各国からの留学生やドイツの現地学生と一緒にたくさんの経験を積む事ができました。

この記事では、私の留学生活を振り替えるという形で、ドイツ渡航前に準備したことや、実際の留学生活、講義の様子など詳しく紹介し、これから留学したいと考えている皆さんの手助けになればと思います。

それでは、最後までお付き合いください!

ドイツへの憧れから交換留学に至るまで

ネルトリンゲンの街並み/写真提供:Aya

幼い頃から、クラシック音楽が好き、童話やファンタジー映画に出てくるような中世の街並みが好き、というぼんやりしたドイツへの憧れがありました。

英語が得意だったので、進学した大学では、国際文化学を専攻し、英語圏文化について研究しようというところでしたが、ドイツのルートヴィクスハーフェン経済大学との交換留学プログラムを知り、「憧れの地に住むチャンスは今しかない!」という気持ちで応募しました。

そして、2019年3月から2020年2月まで1年間(2セメスター)留学しました。

留学先のルートヴィクスハーフェン経済大学ってこんな大学

ルートヴィクスハーフェン経済大学のYotubeチャンネルより

ルートヴィクスハーフェンは、ラインラント・プファルツ州の都市で、世界的な総合化学メーカーBASFの本社が置かれています。

街はどちらかというと伝統的な建築などはあまりなく、 現代的な印象で、移民労働者が多く住んでいます。

大学は、ビジネス系の学術分野を研究する機関で、学生数はおよそ4500人です。

ドイツの大学にはUniversität (発音:ウニヴェルジテート)と呼ばれる総合大学とHochschule (発音:ホーホシューレ)という専門的な分野を研究する高等教育機関の2種類があり、ルートヴィクスハーフェン経済大学は後者にあたります。

ホーホシューレでは企業に就職した際、即戦力となれるような実践的な授業が多くあります。学生はマーケティングやコンサルティングなど、自分が希望する職種に直結する講義・研究を選びます。

私が留学していた大学はグローバルな視点でのビジネス研究に力を入れており、英語で行われる講義や複数レベルのビジネス英語コースがあります。

また東アジアセンターという別キャンパスでは、中国語・日本語・韓国語コースがあり、経営学と言語学を一つの専門コースに統合したユニークな学部で、ドイツ初めての試みとして国内外から注目されているようです。

留学生は、エラスムス制度を使ってヨーロッパ各国や、中東から来ている他、東アジアセンターとの交換留学制度を提携している日本、韓国、台湾、中国からも多くいます。

ドイツ大学生活の一日はこんな感じ  

マネジメントの授業で使われたスライド/写真提供:Aya

 ドイツの大学は1年間で2セメスター(学期)が主流です。

わたしは前期に5つ、後期に8つの講義を受けていました。日本の大学の感覚では少ないと思うかもしれませんが、ひとつの講義が3時間あったり、週に2回あったり、課題も含めなかなかハードなので、十分だったかなと思います。

1限目の授業を取ると、なんと朝の8時15分から始まります!

ドイツ人の朝は早い…。

幸い、学生寮からバスで15分程度のキャンパスだったのでなんとかやっていました。

学食のごはん/写真提供:Aya

ランチは食堂で食べていました。はじめは朝昼晩全て自炊しようと意気込んでいましたが、早々に断念(笑)。

食堂の”今日のランチ”はボリューム満点ですし、ドイツ料理ばかりなので、平日はいつも利用しました。

午後の授業が終わって、放課後は買い物や、スポーツコースやジムに行きます。近隣の大学が共同で無料開講しているコースがいくつかあって、わたしはズンバとヨガをやっていました!

日本では、サークルやバイトで忙しく、なかなか体を動かすということもなかったのですが、ドイツ人の友人に誘われてボルダリングやアイススケートも始めてみました。なんでもお金をあまりかけずに挑戦できるのがとても好きです。

友達と一緒にボルダリング!/写真提供:Aya

友達とアイススケートも!/写真提供:Aya

学生寮では、友人の部屋と自分の部屋とを気軽に行き来していました。朝までゲームをしたり、一緒に勉強したり、映画鑑賞会をしたり、思い出の詰まった大切な場所です。

ドイツの大学で経済・経営を学ぶにあたり、日本ではできなかった体験

EUという特殊な環境で経済を考えられる

ローテンブルクの街並み /写真提供:Aya

前述した通り、ルートヴィクスハーフェン経済大学はビジネス系の学術を、より実践的に学ぶことができる機関です。

そしてEU(欧州連合)という、わたしたち日本人から見ると特殊な環境で、経済を考えることになります。こういった環境の違いは私にとって非常に学びが大きいものでした。

また、様々な国から留学生が集まる事もドイツで勉強する一つの長所といえます。例えば、共通の通貨ユーロを持つことのメリット・デメリットについて、EU加盟国出身の留学生と非加盟国の留学生同士が議論し、いろいろな角度から問題に向き合うなど、留学生が多い国ならではの教育環境がそこにはありました。

それから、ドイツと日本の共通点といえば、自動車産業が盛んであるということ。そのため、商品生産管理の授業では、トヨタ式の管理システムについて取り上げられるなど、日本とドイツ、自動車産業が国の製造業を支えている国同士、お互いに影響し合っている事が強く感じられました。

1年を通して様々な講義を履修しましたが、その中でも、とくに印象的だったグループワークについて続いての項目で紹介していきます!

実践型の教育環境を学ぶという意味でも本当に有益だったグループワーク

ビジネスプランのアイディアメモ /写真提供:Aya

ビジネスプランという授業・グループワークは、とても有意義で、留学生活の中で一番成長を実感できたものでした。授業そのものは学生が、大学周辺地域で実現できるような、ユニークな起業プランを作成し発表するというものです。

わたしのグループは、美容に関心のある学生が集まり、化粧品を扱う会社を立ち上げようという想定で取り組みました。

はじめは、セルビア人の学生が

「わたしは肌が荒れやすいから、安い化粧品は怖いの。日本の化粧品は質が良くて羨ましい!」

と言ったのがきっかけで、肌に優しい高品質なものを提供するというざっくりしたコンセプトが決まりました。

日本コスメを中心に、厳選した商品を一店舗に揃えるというのが最初のアイデアでしたが、浅いプランで没に。。。

そこで今日のトレンドやターゲットを具体的に挙げていきました。エコフレンドリー、ヴィーガン、オーガニック、アニマルテストフリー、など様々なキーワードが上がりました。

メンバーとの議論の末、製品が何からできているのか、原材料を消費者が自ら選べるようにしたいというコンセプトに辿り着きました。そこで、「ボディケア用品を手作りできる、ハンドクラフトショップをやろう!」ということになりました。

私達が提案した事に対し、教授がおもしろい発想だと言ってくれて、さらに

「僕の娘がシャンプーを手作りしていたことがあるから、いろいろ聞いてみなよ。」

と、連絡先を教えてくれました。

その後実際に連絡してみたのですが、彼女から

「いろいろな店を回って原材料を仕入れることが大変だったから、今はもう作っていないの。」

という意見がきっかけで、わたしたちのビジネスは、ひとつの店舗ですべての原材料が揃うことが「強み」なんだ、とアピールポイントを発見しました。

授業全体でこの企画が採用されるような、魅力的なプレゼンテーションの方法についても試行錯誤しました。方向性は決まったものの、店舗のロケーションや、予算、仕入れ値に対していくらで売れば利益が生まれるのか、などビジネスを持続させる具体的な情報を決定させるために、とにかく話し合いとリサーチが続きました。

ただ、できるだけ講義の時間内に進めようというのが私達流、結果的にそれがドイツ流であったといえるかもしれません。

教室に残ったり課題を持ち帰ったり、ということはあまりしませんでした。やるときは集中してやる、そして休む時は休む、というスイッチの切り替えが大切だなと実感しました。

最終プレゼンテーションを終えて、教授からは予算計画に関して、まだまだ不十分だとダメ出しがありましたが、「君たちのコンセプトは本当に素晴らしいと思うよ。」と言って貰えました。

グループは4人の国籍がばらばらの留学生がいて、みんな一生懸命に母語ではない英語を使っていましたが、プロジェクトの最中にふと、この国際的で活発な教育環境に感動することもありました。

そんな、メンバーとは留学を終えた今も仲良しです。

留学前に準備しておいて良かった事

ドイツ語や英語の準備

ルートヴィクスハーフェン経済大学では、講義で使われる言語が英語なので、出発前に英語のライティングとリスニングをしっかり準備していこうと考えていました。

日本の大学で出される課題の論文を英語で書くようにしたり、ネイティブの教員と会話する時間をたくさん設けてもらうなど、とにかく英語を使う時間を増やそうと努力しました。

また、アメリカ映画やドラマを字幕なしで鑑賞していました。もちろん完全に理解できるわけではありませんが、人物の口の動きや表情に注目しながら台詞が頭に入ってくるので、より実践に近いような気がしますし、リスニング力を向上させるのにおすすめしたいです!

ドイツ語は、大学の第2外国語として、週に2回文法の授業を受けていました。ある程度自分でドイツ語が理解できるようになってきた段階で、実力をはかるために独検3級に挑戦し、ドイツ出発前には合格していました。

ドイツに行ってから一から始めるよりも、基礎を身に付けてからの方が、モチベーションも高まります。ですが、日本にいる間には文法を中心に勉強していたので、ドイツ語で会話した事はありませんでした。(授業は日本人の先生でテキストの日本語訳が中心だったので。。。)

なので、ドイツに来た当初は、ドイツ語で話しかけられると固まってしまい、なかなか言葉がスムーズに出てこないことも。言いたいフレーズの字面だけ浮かんでいても、発音の問題で伝わらなかったという経験も多々ありました。

準備段階で、ドイツ語ネイティブスピーカーと練習できる機会を作れたら一番良いと思いますが、簡単ではないと思うので、ドイツ映画やYoutubeなどをたくさん観て、発音に耳を慣らしておくだけでも違ったかなと思います。

日本から持ってきて良かった物

洗濯ばさみがたくさん付いた物干しと洗濯ネット

2つとも近くのお店ではなかなか見つからなかったので、持ってきて良かったです。洗濯機は学生寮の皆で共用かつ有料だったので週に1回くらいのペースでまとめて洗濯していました。

ドイツでは、部屋干しが基本になると思いますが、日本よりも乾燥しているのでとくに匂いトラブルなどはありませんでした。

お箸・醤油やみりんなどの調味料もあると便利

節約のためにできるだけ毎日自炊し、基本的には学生寮の近くのスーパーで揃う材料で日本食を作っていました。野菜を炒めるにも卵を焼くにも、菜箸は必須です。

勿論、普段の食事用にお気に入りのMy箸は持参しましょう!調理器具は前の住人に譲ってもらった物もありますが、基本すべて現地で揃えました。

食品に関しては、あると嬉しいです。醤油やみりんなどの調味料は、ドイツのアジアスーパーで購入できますが、日本の3倍ほど値段がする高級品です。

わたしは現地で揃えましたが、日本から1本ずつ持ってきても良かったなと思います。インスタントのお味噌汁は少し持ってきて、自炊のやる気が起きないときや時間がないときに食べていました。

友人で、キャリーバッグを日本米やカップ麺でいっぱいにしてきた人もいましたが、そこまでしなくても…。(笑)

美容グッズは自分に合ったものは持って行った方が良い

お気に入りのドイツ製バス用品 /写真提供:Aya

使い慣れている化粧品は持ってくるようにしましょう。

海外コスメを楽しむのも良いですが、新しい環境では肌トラブルが起きやすいので、まずは普段通りがおすすめです。

逆に、シャンプーやボディソープ、オイル、クレンジング、化粧水等々はドイツのドラッグストアで買いました。日本は軟水ですが、ドイツは硬水なので、現地の環境に合わせて作られている商品の方がおすすめです(例えば泡立ちの良さなど)。

留学生と話してみて、それぞれ違う各国の恋愛観 

シュパイヤーのクリスマスマーケット/写真提供:Aya

国籍や文化が違えど、恋愛の話は盛り上がります。そしてインターナショナルな環境では、カルチャーショックもたくさんあります。

まず驚いたのは、告白という文化があるのは日本だけかもしれないということ…。

改まって交際を申し込まれると、ちょっと引いてしまうというドイツ人やヨーロッパ各国の友人たちに、どうやって彼氏彼女ができるのかと聞いてみました。

気になる人と二人の時間を過ごして、関係を発展させながら、

「そういえば私達付き合っているよね」

という話があったり、友人や家族に

「ボーイフレンド/ガールフレンドだよ。」

と紹介したりして、ようやくわかるというパターンが一般的のようです。
このような背景にはいきなり思いを告げて玉砕するのが怖いというのもありそうですね(笑)。

曖昧な関係の期間に相手を見極めたり、人によってはその間に別の相手とデートすることもあるようで、たしかに合理的といえるかもしれません。

恋人を紹介するといえば、日本では、恋人の家族に会うというのは緊張の一大イベントと思っていたのですが、ドイツでは、気軽に実家に遊びに行き、家族恋人ともどもリラックスして過ごしている人が多い印象です。

わたしは恋愛事情に関して、家族や周囲にさえも隠すタイプだったのですが、オープンにお付き合いできると素敵だなと思います。

結婚についての価値観は、十人十色、多様で興味深いです。

ドイツには「愛の誓い」というロマンチストタイプもいれば、「結婚は信じられない」「制度がそもそも時代に合っていない」と冷静な社会派タイプもいます。

女性陣は「経済的に自立したいし、結婚に興味がない。」という意見が多かったのも印象的でした。実際にドイツやフランス、北欧など多くのヨーロッパの国では、事実婚が多く、子どもを持っていても、何十年もずっと”付き合っている”という状態が珍しくないようです。

さらにオランダやスウェーデンなど複数の国では、婚姻がなくても、パートナービザという、永住者の恋人がいる外国人が取得できる滞在許可証があります。勿論、同性でも認められます。

恋愛一つ取ってみても、当たり前の形なんて無いのだなと気づきました。そして愛の形は人の数だけある、ということが社会制度に反映されている事は素晴らしいと思います。

最後にこれからドイツで経営・経済学を学びたい留学生へ    

とにかくドイツに行ってみたいという気持ちから始まった留学でした。

日本で専攻していた分野とは違ったので、苦労はありましたが、非常に刺激的な学びでした。

経営学は講義を通して考えたことが、常にリアルタイムで生きてくる学問だと思います。とくにEU圏という特殊な環境に滞在することで、単一通貨ユーロ問題や国際間の関税、労働力の移動について、上げるときりがありませんが、本当に自分自身の問題となるのです。

いま経済学やビジネス系の学術を専攻している方、現代社会に関心のある方はもちろん、学びたい分野を迷っている人も、ぜひ留学をして、新しい視座を獲得してみてください。 ドイツ語がわからないから不安だという方でも、ドイツの大学では英語で学べる学科もたくさんあります。

留学というと、言語や専門スキルの習得を目指さなければ、と思う人がいるかもしれませんが、わたしは必ずしも先にゴールを決めなくていいかなと思います。

ドイツに住んで初めて、関心を持つことの方が多いです。そして何より、かけがえのない出会いがたくさんあることでしょう!

著者:Aya(instagram) /編集:井上誠志



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