日本の大学で文系だった私は今、ドイツのダルムシュタット工科大学で情報学を専攻している 22SS

初めまして、現在ダルムシュタット工科大学(外部リンク)に正規学生として在籍し、情報学を専攻している山田です。

記事のタイトルにもあるように、私はつい最近まで日本の大学の文学部でドイツ語を専攻しており、卒業と同時に渡独し現地の大学に入学しました。

この記事では、根っからの文系だった私がドイツで情報学を専攻しようと思った動機から、必要だった書類や入学手続き、入学1年目を終えた私の大学生活についてなどお話しできればと思います。

私のように日本の大学では文系専攻だけど、ドイツの大学で理転もしくは情報学を専攻してみたいと考えている方はもちろん、これから現地で正規留学を目指しているみなさんの参考になれば幸いです。

なぜ日本の大学を卒業後ドイツの大学に行こうと思ったのか

冒頭でも述べたように、私は日本の大学で文学部(国際系の学科)に在籍し、ドイツ語など言語学やドイツ文化などを中心に学んでいました。在学中から卒業後まで特に、「ドイツの大学でもう一度勉強したい」ましてや「海外で理系の大学に入学したい」という気持ちはありませんでした。

今の大学生活に至るまでには紆余曲折がありました。。。

日本での大学生活とハイデルベルク大学への交換留学

私の場合、大学の専攻としてドイツ語を選んだ理由は非常に適当なものでした。もともと隣国のチェコが好きだったのですが、私の学科ではチェコ語は学べなかったので、それなら隣のドイツでいいやと。そうして特に思い入れもなく始まったドイツ語の勉強でしたが、大学で良い成績をとるために勉強しているうちに読み書きはなんとなくできるようになり、ドイツ語に対する熱量も次第に上がっていったのです。

留学については経済的な問題もありどうしようか悩んでいたのですが、遅まきながら4年の後期に1学期だけ交換留学をすることにしました。

私の大学では交換留学は出発の約1年前に募集があったので、3年になってから「よし、行こう!」と決断しても出発は4年になってしまうんですよね…。留学に応募した時点で、大学の卒業は1年延ばすことにしました。

大学協定校の中から行き先に選んだのはハイデルベルク大学でした。ハイデルベルクでは大学の授業を1つ履修し、他に大学併設の語学学校のようなところで週2回ドイツ語の授業を受けていました。つまり週3コマ、時間割もスカスカなわけです。空いた時間はドイツ語の勉強にあてていましたが、もう2〜3コマ授業をとっていてもよかったなと思います。

現地では出発前に自分がシェアハウスや寮を手配する必要もなく、ハイデルベルク大学側が斡旋してくれた学生寮に住んでいました。ドイツではよくあるWGタイプ(シェアハウスのようなもの)で、1人1つ個室があり、キッチン風呂トイレは共同というものです。ルームメイトは東欧出身の女の子で、すでに6年住んでいるというベテランでした。

ハイデルベルクで住んでいた寮の個室/提供:山田

ドイツの学生間ではごく一般的なWGですが、正直私には向いていなかったなと思います。

私はもともとオープンな性格ではなく、家ではテンションも低くあまりしゃべらないので、他人に対して家でもフレンドリーに振る舞ったり、気を遣ったりしなければならない状況に日々ストレスを感じていました。半年だけだったので耐えられましたが、もうルームシェアはしない!とその時心に決めました。(笑)

日本の帰国前にTestDaF(Test Deutsch als Fremdsprache)の試験が行われることを知っていた私は、渡独から1ヵ月が過ぎたくらいに、ドイツ語勉強の良い目標になると思い申し込みました。

TestDaFは、ドイツの大学を受験する際の語学証明として認められる語学試験の1つで、読む書く話す聞くの4技能それぞれがレベル3、レベル4、レベル5の3段階で評価されます。ドイツ学長会議(Hochschulrektorenkonferenz)によれば、4技能すべてでレベル4以上をとれれば、有効な語学証明としてドイツ語が入学の条件となっている大学に応募できるとされています。

この時はまだドイツの大学に入学しようとは全く思っていませんでしたが、半年留学の間に挙げられる成果としてTest DaF合格(4技能すべてでレベル4以上)を目標に勉強をすることにしました。

その頃、一緒に試験を受けてくれるという日本人の仲間も見つかり、みんなで切磋琢磨しながら勉強を続け、目標は無事クリアできました。

文学部から情報学部に入り直そうと思ったきっかけ

帰国後の1年後、私は日本の大学を卒業して再度渡航することになるわけですが、この時は「ドイツの大学で勉強したい!」からなどではなく、ハイデルベルク大学留学前からお付き合いしていたドイツ人の彼が現地に住んでいた事が大きな理由です。

彼とは日本で知り合い、半年間の留学中に2人で今後も関係を続けていけそうかどうかを見極めて、大丈夫そうなら大学を卒業してからドイツに来て一緒に住もうと考えていました。その後、無事?大丈夫だと判断したので、卒業後ドイツに行くという道が決まりました。

現地の大学で学ぶ、特に情報学を専攻するきっかけとなったのは3年の時からずっとやっていたITベンチャー企業でのインターンでした。仕事内容は、会社が運営しているtoBウェブメディアの記事の編集・新人インターン生の教育・インターン生の業務管理/勤怠管理などでした。

インターン生の管理にあたっては、Googleのスプレッドシートを主に使用していました。業務効率化をするために、スプレッドシートの関数を調べて使ってみたり、Googleのプログラミング言語Google Apps Scriptを見よう見まねで書いてみたりしていました。

そうやって試行錯誤しながら目的のものに近づけていく過程が楽しいなと感じ、「自分プログラミングとか向いてるかも?」と思うようになりました。ただ最初は大学に入り直すつもりはなく、ドイツに渡航したあとに3か月ほどのプログラミングブートキャンプに参加して、そのあとITベンチャー企業に就職する、というようなルートを描いていました。

しかし、いろいろ調べているうちに、学歴社会のドイツではブートキャンプに参加しただけではどうやら就職するのは難しそう、という結論に至りました。方針転換しIT系のAusbildungを募集している会社に複数応募しましたが、1社面接をしてもらえただけであとは書類選考で落とされてしまいます。

そして結局、時間はかかるものの資格としては確実な大学を選びました。

新卒ながらドイツで就活するという道もあったと思うのですが、やはりIT分野で働きたいという希望があったのと、自分の語学力ではまだドイツで仕事ができるという自信がありませんでした。というわけで、遠回りをしてでもドイツのIT分野で働くための切符、つまりドイツの情報学部の卒業資格を手に入れ、同時に時間をかけてドイツ語と英語を磨くことにしました。

ダルムシュタット工科大学入学までに必要だったこと

こうして紆余曲折を経て大学入学という目標を定めて、ダルムシュタット工科大学を含め近隣の4大学に出願することにしました。ちなみにダルムシュタット工科大学にしたのは、ドイツ再渡航後にダルムシュタットに住んでいたからです。工科大学としてはドイツ国内でもある程度名前が通っているので、それもあって決めました。

大学入学を決めるまでに時間がかかっていたので、出願しようと思った頃には一番早い大学の締め切り日7月15日まで1か月前もなく、急いで直接郵送で、保険として希望の大学以外にも3つuni-assist(外国人の願書を審査する機関)経由で出願しました。

出願に必要だった書類は、大学の卒業証明書と成績証明書、高校の卒業証明書と成績証明書、パスポートのコピー、そして語学証明書です。この中で準備が一番大変だったのは、高校の成績証明書でした。

大学の書類は卒業時にもらっていたので特に問題なく、語学証明書も交換留学時に受けたTestDaFがあったので大丈夫でした。一方高校の成績証明書は、学校教育法施行規則により卒業後5年間保存されることになっていて、6年目以降は発行できなくなります(卒業証明書は卒業後20年まで)*3。

私はこのことを知らないまますでに5年が経過してしまっていたので、成績証明書は発行してもらえない状態になっていました。そこで苦肉の策として、卒業後20年間発行できる「単位取得証明書」をもらった上で、評定の載っていない成績証明書に英語で「データがないので記載できない」という旨を書いてもらいました。

高校の評定なし成績証明書/提供:山田

同じような状況の友人は、これに加えて高校3年間の通知表とセンター試験の結果を翻訳して提出したそうです。私も実家の母親にこれらの書類を探してもらいましたが、通知表は一部しか見つからず、センター試験の成績通知書も見つかりませんでした。

仕方なく手元にある書類だけで出願し、結果的に入学許可をもらえましたが、こればかりは個々の大学の判断によると思います。私の出願した学部がNC-frei、つまり人数制限がなく書類がそろってさえいれば基本的に入学許可がもらえるところだったので、それが影響していたのかもしれません。出願した時は明らかに書類不足だったので、結果が出るまでは本当にドキドキでした。

高校と書類をやりとりした際は、日本の両親が間に入ってくれたので帰国する必要もなくなんとかうまく行きました。それでも日本、ドイツ間で書類の郵送が2回発生し、出願締め切りまであまり時間がなかった私は願書締め切りまでに届くかどうかヒヤヒヤしていました。

過去には届くまで1か月以上かかったり、途中で紛失されて結局届かなかったりということもあったのですが、当時は奇跡的に2回とも1週間以内でスムーズに到着したのでラッキーだったと思います。ただこれから留学されるみなさんには、出願準備は早め早めにやることをおすすめします!

大学から入学許可証が発行されて、実際に入学するまで: コロナ検査や住居問題、高校数学の復習‥

ドイツに到着した日に撮ったダルムシュタットの中心広場/提供:山田

私は日本の大学を卒業後、5月にドイツに渡航したわけですが、当時はコロナ禍で、以前ほど簡単にドイツに入国できるわけではなく、私も渡航理由を説明するための書類をいろいろと用意しました。出発当日、日本の空港では、PCR検査やチェックインでの入国書類確認などに予想以上に時間がかかり、搭乗時刻ぎりぎりになってやっとセキュリティチェックにたどり着きました。

飛行機の搭乗率は1割もなく、エコノミーながら終始横になって寝られたのはよかったです。

ドイツで住む家は知り合いの紹介ですでに決まっていたのですが、改修工事が終わっていないということで一旦ホテル暮らしをすることになりました。もともと工事は私がドイツに来る前に終わっているはずだったのですが…ドイツあるあるですね。3か月たっても工事は終わらず、9月になって同じ建物の別の部屋がたまたま空いたのでそこに入居することになりました。結局もともと住む予定だった部屋の工事が終わったのは11月くらいだったと思います。

大学に入ることを決めたのが6月中旬で、それから入学まではドイツ語の勉強や数学の復習などをしていました。

特に数IIIは高校で習わなかったので、YouTubeの授業動画などを見ながら自分で勉強していました。数学自体5年ぶりだったので、公式類はきれいさっぱり、πが何度だったかも忘れていました。あの状態のまま大学数学につっこんでいたら結果は目に見えていたと思うので、事前にある程度リハビリできたのはよかったです。今振り返ってみると、数IIIの範囲では特に微分積分、数IIでは指数対数などは、復習しておいてよかったなと思います。

当時のノート。ひたすら基礎から復習していました/提供:山田

ドイツ、情報学部の1年目を終えての感想

ダルムシュタット工科大学の図書館/提供:山田

大学入学の1学期目はコロナの影響で、完全オンライン授業でした。私としては、寒いドイツの冬に家から出なくても授業が受けられるというのはよかったのです。ですが、演習の授業はやはり対面のほうがいいなぁと思いました。Zoomで真っ暗な画面と話をするのは少々味気なかったです。

2学期は対面授業が再開して大学にも行くようになり、ようやく友達もできました。1学期と2学期の詳細なカリキュラムや授業やグループワークの様子、感想については私の個人ブログで詳しく書いているので、興味のある方はぜひご覧ください。

友達の家で一緒にスコーンを作った時の様子/提供:山田

1日の大まかな大学生活について

私のとある1日の様子をご紹介します。とはいえ大学の時間割に沿って生活しているので、毎日起きる時間も異なれば、大学に行く時間、帰ってくる時間もバラバラです。

2学期の時間割(VLは講義、Üは演習)/提供:山田

ここでは、2学期の月曜日を例にとって紹介します。

午前中はまず必修科目の講義に行き、その後は昼食を食べに一旦家に帰ります。食事は基本的に家で自炊しています。以前は日本の家庭料理でよくある和食・中華・韓国料理あたりを主に作っていたのですが、最近はドイツのレシピサイトを見てこちらの家庭料理にも挑戦しています。日本の調味料や米などはアジアスーパーで手に入りますが、値段が日本の2、3倍はします。ドイツの一般的なスーパーで手に入る食材や調味料だけで料理をするとそれだけで節約になることに最近気づきました。

昼食後は買い物に行きます。買い物は週1回で済ませていて、行く時は近くのスーパーで1週間分の食料を買い込んできます。買い物から帰ってきたらまた大学に行きます。午後は情報学部の必修科目とスペイン語の2つ授業があるのですが、この2つは時間が一部バッティングしているので必修のほうの授業には行きません。代わりに、スペイン語の教室に1時間くらい早めに行って、そこで必修の講義の同時配信を見ることにしています。

スペイン語の授業が始まる時間になったら中断して、残りは翌日録画を家で見ます。

おそらく他のドイツの大学でも同じような感じかと思うのですが、私の大学では決まった授業時間枠がなく、受けたい授業の時間がかぶっていることはよくあります。 この場合、どちらかが授業の録画をあとで上げてくれるのであれば、実際の時間がかぶっていたとしても両方とも受けられます。

なぜスペイン語を勉強していたのかというと、その後の夏休みにスペイン・ポルトガル旅行に行くことが決まっていたからです。ドイツ人学生に混じってドイツ語でスペイン語を学ぶという体験は新鮮で、おもしろかったです。

ちなみに最近、飲食店でアルバイトを始めました。いわゆるMinijobの範囲内で、週末だけ働いています。会話はすべてドイツ語で、とっさに話そうとするとまだ言葉に詰まることもありますが、これも慣れかなぁと思っています。

大変なこと

留学や海外在住というとキラキラしたイメージを持たれがちですが、実際にそういう「インスタ映え」するような生活を送っているかと言われれば、私はそうではありません。

それこそ最初は美しい街並みに見とれたりもしますが、すぐにそれは「日常」となり、自分にとって特別なものではなくなります。生活の中では、異国で外国人として生きていくことの大変さをあちこちで痛感させられます。よくあるものとしては、外国人局では担当者に邪険に扱われたり、街中でアジア人差別にあったり、などです。

ドイツに住んでいて大変だと思うのは、「ドイツ文化・ドイツ社会になじむということにかけては終わりがない」ということでしょうか。

特に最近思うのは、言語ができることはその国の人とのコミュニケーションがうまくできることと同義ではなく、言語ができるようになってもそれで終わりではない、ということです。

1つ目の例が、表情・仕草・声のトーンなどのノンバーバルコミュニケーションです。

ドイツ人を観察してみると、挨拶の場面1つとってもそのノンバーバルコミュニケーションは今の自分のそれとかなりかけ離れていることに気づくのです。育った文化が違うので限界はあるかもしれませんが、ドイツ語ネイティブに近づこうと思ったら、このように言葉以外にも真似しなければいけないポイントは無数にあるなと感じます。

2つ目に例として挙げたいのが、「会話の中での軽い冗談」です。

ドイツでは例えば、天気がものすごく悪い日に皮肉的に「今日はとってもいい天気ですね」などと言って笑う、という場面を数回目にしました。こういう冗談って日本ではあまり言わないと思いますし、私としても正直あまりおもしろいとは思えません。

ただ、こういう冗談をおもしろいと思うドイツ人は少なくとも一定数存在しているわけなので、笑いのツボは文化によって違うのだなぁと感じています。そして同時に、その笑いのツボさえも、ドイツ人と円滑にコミュニケーションをとる上で、ひいてはドイツ社会になじんでいく上で、勉強しなければいけない対象なのだと感じます。

どこまで求めるのかというのはありますが、ドイツ社会になじむことを自分があきらめない限り学び続けなければいけないなと思っています。

後書き

ドイツ語には「Komfortzone verlassen(居心地のいい場所を抜け出す)」という言い回しがあります。

私のような内向的な人間にとっては特に、海外で生活したり、海外で大学に通ったりするのは、このKomfortzone verlassenの連続です。これは痛みを伴いますが、このKomfortzoneを抜け出す時こそ自分は成長していると感じますし、日常生活でもこの言葉を意識しています。

ただ一番大事なのはみなさんの心身の健康なので、「自分今無理しすぎてるかも」と思ったら一度立ち止まってKomfortzoneに逃げ帰ってもいいのではと思っています。特に正規留学は滞在期間が長くなるので、困難なことがあったらうまく気分転換をしながら乗り切るようにするといいと思います。

これからドイツに留学するみなさんが、健康で充実した留学生活を送れることを願っています!

著者:山田/編集:井上誠志

出典

*1 TestDaF, FAQ Häufig gestellte Fragen (最終閲覧日:2022年9月6日) https://www.testdaf.de/de/teilnehmende/mein-testdaf/faq/faq-allgemein/

*2 Hochschulrektorenkonferenz, Deutsche Sprachkenntnisse für das Studium an deutschen Hochschulen (最終閲覧日:2022年9月6日)

https://www.hrk.de/themen/internationales/internationale-studierende-und-forschende/hochschulzugang-fuer-internationale-studierende/sprachnachweis-deutsch/

*3 文部科学省, 別紙6-5 学校教育法(抄)及び学校教育法施行規則(抄) (最終閲覧日:2022年9月6日)

https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/shotou/101/shiryo/attach/1343820.htm



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