ドイツ留学体験談:本当は教えたくない「ドイツ語ゼロからドイツ芸術大学に合格できた方法」

 ドイツ留学体験談第12回目は今年の夏からミュンスター芸術大学のLehramtに入学するUneさんに登場していただきます。「レアアムト(Lehramt)って何?」という素朴な疑問から、「どうやって入学するの?受験の仕組みは?」と踏み込んだ質問までどんどんぶつけていきます。

フロイト先生

ドイツの芸術大学で学びたいという方には本当におすすめの留学レポートじゃぞ!

プロフィール

ニックネーム:Une
留学先:ミュンスター芸術大学(Kunstakademie Münster)

ミュンスター芸術大学のレアアムト(Lehramt)ってどんな所でしょうか?

Kusntakademiemünsterのロゴ

 ミュンスター芸術大学(Kunstakademie münster)はミュンスター(Münster)という街にある小さな美術学校です。私は今年の10月から美大の生徒として、この大学で自分の作品作りをします。また私の場合、芸術大学に通いながらWestfälische Wilhelms-Universität(ミュンスター大学)の教育学部にも通い、小学校教員になるための勉強をすることになっています。

 

 卒業時の国家試験にパスすると、ドイツで教員として働くことができるのがLeramtというコースです。日本でいう国語の授業も行わなくてはならないため正直自分がこちらで教員になれるかはわかりませんが、将来的に美術と子供と関わり続けていきたいと思っているので、こちらのコースを志望しました。

フロイト先生

ミュンスターには芸術大学の他にもミュンスター大学を初めいくつかの大学があるのじゃ。ちなみに同じ街にいくつか大学があると、一つの学科でもUneさんのようにミュンスター大学と芸術大学、同時に2つ大学に通ったりできるコースもあるのじゃ。

でも、どうして日本じゃなくてドイツの芸術大学を?

 両親が共に画家をしているので家に豊富に画材が揃っていて、描いたり作ったりしながら育ちました。高校生の時、美術への進路の相談をすると、藝大を出た両親に

 

「日本の美大で技術重視のアートをするよりも、あなたは海外で伸び伸びと表現をする方が合っていると思うよ」

 

 と言われ海外で美術を勉強することを考え始めました。他にも高校時代にデンマークで1年間過ごした事や、個人的に「ヨーロッパで暮らしてみたい!」とずっと思っていたので、州立の美大が多く生活費も安いドイツに白羽の矢を立てました。

 

ドイツの芸術大学入学は他の大学とは違い入試のような物があると聞いたのですが..入試について教えてください!

美大受験はmappeに始まります!

 

 mappeとは自分の美術作品を20作品集めたポートフォリオです。これの作成に1年を費やしました。写真や立体物は別ですが、絵は基本的にオリジナルを提出する必要があるので、受験大学を増やせば増やすほど、必要作品数が20づつ増えていきます。この審査でほぼ合否が決まります。

 

 受験資格は他の大学とさほど変わらず、大学入学資格(Abitur)に匹敵するものが証明できれば問題ありません。提出書類も①オンライン応募書類のコピー②成績証明(Abitur相当)③語学証明④履歴書⑤パスポート写真と、特に変わったものはありませんでした。③の語学証明は、教員コースは受験時B1、入学時C1が必要です。通常の美術学部は大学によってまちまちです。

 

ミュンスター芸術大学のLehramt入学に必要な物
  • mappe
  • オンライン応募書類のコピー
  • 履歴書
  • 写真
  • 成績証明(Abitur相当)
  • 語学証明(受験時B1、入学時C1)

※必要な書類などは各大学や年度によって異なります。受験前は各大学の募集要項をご確認ください。

 

 そして実は、美大受験は受験書類やmappe提出前から、なんとある意味での選考が始まっています。今思い出しても本当にやっていて良かったと思うのは、事前の教授との面談です。大学のホームページから説明会やオープンキャンパスの日を見つけたり、教授のアドレスを見つけて直接コンタクトを取って約束をして、制作途中のmappeを見てもらうのです。

 

 大学によっては教授がクラスの生徒の選考権を持っているため、ここで既に合否を言い渡されます。私が受けた美大は教授に権利がなかったので合格とはいわれませんでしたが、会いに行った教授に「とても良いと思うから他の教授やスタッフにも君のことを話しておくよ。名前を紙に書いておいて」と言ってもらえ、実際に合格をいただけました。

 

ドイツの芸術大学だと、どの大学でも入学の仕組みは一緒でしょうか?

 私はミュンスター芸術大学の他にベルリン芸術大学も受験しました。ミュンスター芸術大学ではこのmappe審査のみで合否の連絡がきましたが、ベルリン芸術大学(以下:UDK)には二次試験がありました。受験学部によって試験内容は違います。

 

 私は小学校教員コース志望だったので、実技のテストはなく、①筆記試験と②面接の二つがありました。①では、4時間の制限の中で志望理由などの4つの質問にドイツ語で答えました。辞書の持ち込みもメモの持ち込みも大丈夫でした。②では10人くらいの教授からの質問に10分程度答えました。主に①で書いた内容への質問が多かったです。Mappeで提出した作品に対する質問をされたと言っていた受験者もいました。

 

芸術大学受験の準備にはやっぱり苦労しますよね…

 作品作りはとても充実していましたがやはり苦しかったです。どの教授にも

 

「あなたを表現しなさい!美術の授業でやらされたようなつまらないものは持ってこないで!」

 

 と言われ、自分が何を表現したいのか、どうやったら形にできるのか、そもそもなんで表現したいのか、ぐるぐる悩みながら試行錯誤の日々でした。3校受験したため、最低でも60作品準備する必要があり、質という意味でも量という意味でも本当に提出期限に間に合うのだろうかとそわそわしながら準備しました。ドイツ語の勉強が息抜きでした。

 

 また、制作途中のmappeを人に見せるのも最初はとても抵抗がありました。これから美術を勉強する身でまだ未熟な状態で生み出した納得のいっていない作品を人に見せるだなんて…という気持ちでした。うじうじしていたせいで教授との面談は提出ギリギリになってしまいました。その面談で作品作りに火がつくような厳しく的確なアドバイスをいただけて、制作に勢いがついたので、もっと早く見せに行けば良かったと後から思いました。

フロイト先生

芸術大学や医学部など一部の大学や学部では一般的な入学条件に加えて入試もあるのじゃ。各大学の募集要項はきちんと確認するようにな。

『留学前に準備しておけば良かった』と思う事はありますか?

留学生と一緒に交流会

 すごく小さなことですが、貧乏受験生で財政が苦しかったので、日本にいる間に学歴証明書類(Beglaubigung)をしておけばと後悔しました。そのお金でケバブがいったいいくつ買えたかと思うと…胸が痛みます。

 

 これからドイツ留学する方には、やりたいことなら絶対にできる!とお伝えしたいです。受験中何よりも印象に残っているのが、アジア出身でまだ片言にしかドイツ語が話せない私が無謀にもドイツの小学校の先生(しかもドイツ語と算数も教える立場!)を目指すことに対して、否定的な言葉をかけてきた人が一切いなかったということです。

 

 ミュンスターの教授との面談でも、UDKの面接試験でも、

 

「言葉はどうにかなるから、問題じゃないよ。やりたい気持ちが大事だ」

 

 とむしろ背中を押していただきました。ここはチャレンジに寛容な国です、好きにやっちゃってください!

フロイト先生

Uneさん、素晴らしいドイツ留学体験談ありがとう。これからドイツの芸術大学留学に興味がある方は彼女のブログも是非一度よんでほしいのじゃ。文章から留学中の様子を肌で感じる事ができる素敵なブログじゃぞ!

著者:Une/編集:井上誠志(@seiji_aachen)

コラム:ドイツ語ゼロからC1に合格できた私が通った語学学校とC1合格の秘訣

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1月 17, 2019



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