2年間ドイツの芸術大学に通って成長したこと、変わったこと、気づいたこと

2年間ドイツの芸術大学に通って成長したこと、変わったこと、気づいたこと

週に1度のコロキウムで作品を解釈・批評する力をみにつける

ミュンスター芸術大学内のアトリエ

アトリエの様子/写真提供:Moriyama Minori

アトリエ研究ではアトリエ内での制作の他、週に1回Kolloquium(コロキウム)という、他の学生と現役の作家である教授の前で作品を発表し、それについて議論する場が必ずあります。

コロキウムは日本のように教授の意見が絶対的なものではなく、全員が対等に話し合いをする場です。ここでは発表をする学生が自分の作品をより良いものにするためだけでなく、作品を見る側が解釈し批評していく力をつけることになり、芸術で食べていくには非常に重要な学びの場だと私は思います。

 

また私の知る限りコロキウムのような討論を芸術家の教育システムとして取り入れている国はドイツの他にありません。(フランス、イギリス、アメリカの学校では知る限り聞かない。)

このコロキウム型の教育システムはドイツで芸術を学ぶ一つの大きなメリットだと思います。

大学の工房と授業について

ミュンスター芸術大学内にあるセラミック工房/写真提供:Moriyama Minori

例えば、私の学校にはデジタルメディア、カメラ、版画、シルクスクリーンと印刷、金属、セラミックと石膏、プラスティック、木の工房があり、またそれぞれの工房に管理や指導をする工房職員が常駐しています。

そのため制作したいものがあれば、いつでも職員の方達に相談したり、彼らの指導の下、創作活動に打ち込む事ができます。

 

工房の外では下で紹介しているように楽焼(らくやき)など日本の伝統的な焼き物も作る事ができます。

①形成した物を窯に入れる様子

②焼成中の様子

③出来上がりの様子

座学では日本に比べて学生が受動的に受ける形の講義は少なく、問答法のように教授は学生が主体的に答えを導き出せるようなテーマを設定します。

そして、学生たちが議題をある程度理解した後に質問して行き、学生は自らその場で起きていることに対して自分の意見や考えを述べます。

自ら積極的に考える必要があるため、まず眠くなるということはないし、また自分で授業のテーマについて思考し、質疑を繰り返し、納得しながら学ぶことで、受動的に聞くよりも理解が深まります。

ミュンスター芸術大学での講義

授業中の様子/写真提供:Moriyama Minori

ドイツの芸術アカデミーでも座学にあまり比重が置かれてない大学もあるようですが、私の学校では必修があり、卒業までに必要な単位があります。

ちなみに学校によっては座学に必修は全くないというのも聞きます。

 

また他に履修できる授業には他にも社会学分野である芸術療法や、教職を取る人のための教育学関係の授業、美術作品の権利問題について学ぶ授業も興味があれば履修することができ、座学の教授が主導する校外授業では、数年に1度開催されるリエンナーレやビエンナーレなど国際美術展覧会に大学の援助、補助金を受けながら訪れることができます。

 

しかも、正規学生であればヨーロッパの国籍を持っていなくてもERASMUS(エラスムス制度)を利用することができ、エラスムス協定を結んでいる国のなかで留学、インターンシップなどを補助金を得ながらすることができます。

 

「そもそもドイツにいるだけで留学といえば留学なのですが、ドイツの学生であればさらに別の国で勉強するための機会があります!」

 

さて、こういったものがざっくり私の学校のシステムです。日本の学習システムとも全く違いますし、環境が違えば制作のスタイルは確実に変わります。芸術家であるために海外で経験を積むことは経歴だけでなく、経験として良いものだと思います。



2年間ドイツの芸術大学に通って成長したこと、変わったこと、気づいたこと

2 件のコメント

  • はじめまして。
    娘の海外大学進学を希望する母です。

    長女が高校三年生。
    芸術系の大学進学・受験真っ盛りです。

    妹のグローバルな学校の影響もあり、
    保護者の私達と長女も海外への興味が湧き、
    色々と海外への進学について情報収集をしております。
    しかしながら、我が家は低所得家庭。
    はじめは短期の留学にチャレンジ!として
    日本の奨学金システム『トビタテ留学JAPAN』
    への応募にチャレンジし、そのチャンスを得れたのですが、コロナ禍で支給対象として渡航が難しく
    なってしまいました。

    本格的に海外への留学には、どうすれば低所得家庭の子供でも、チャレンジする事ができるのか、仕事の合間をぬって、インターネット上でここまで辿りつきました。

    この記事を読み、ドイツの大学についてもっと深掘りをしたいと思いました。

    イギリスのロンドン芸術大学は、大学出願前に、1年間の芸術系の学校を出ていなければならないようですが、ドイツでも同様なのでしょうか。
    高校卒業後、大学へとはいかないのでしょうか。

    ドイツ芸術系大学へ出願するまでの詳しい内容の紹介などあれば嬉しいです。

    • 管理人の井上です。

      こちらのコメント欄に書かれた内容は、著者の方へ直接通知が届かないので、記事内あるSNSリンクから直接執筆者へ質問していただければと思います。

  • コメントを残す

    メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です