2年間ドイツの芸術大学に通って成長したこと、変わったこと、気づいたこと

2年間ドイツの芸術大学に通って成長したこと、変わったこと、気づいたこと

ドイツ芸術大学に入学してから現在まで

ミュンスター芸術大学の構内

ミュンスター芸術大学の構内/写真提供:Moriyama Minori

1学期目に出会ったコロキウムは私の作品に大きく影響した

まず入学当初、1ゼメスターは入学者全員がOrientierungsbereich(新入生過程)というクラスに自動的に所属することになります。このクラスは先ほど述べた基礎過程でのアトリエ研究に当たります。

入学して驚いたのは、同じ新入生に既に他の大学で学士過程を終えた人、ドイツの高校を卒業したばかりの人、社会人から再び大学で学び直しにきた人、国籍、年齢もバラバラだった事です。

ミュンスター芸術大学内にあるアトリエ内作業場所

アトリエ内の作業場所/写真提供:Moriyama Minori

私は入学当初、この新入生過程でのコロキウムでとても鍛えられました。

日本の美術大学を1度出ていますが、どうしても議論の形ではなく、作品を見せて教授から一方的に評価をもらうという受動的な姿勢に慣れており、批判能力や、多角的な思考、また自分の考えをどうやって伝えて行くかという視点に欠けていました。

 

またドイツではジャンルで学科が分かれているわけでもなく、学生の作品もインスタレーション、絵画、立体、パフォーマンスなどありとあらゆるものがあり、それらを同じレベルで考えることになります。

日本では彫刻学科にいたため、特に昔は絵画に対してどう解釈すればいいのかわからず苦手意識がありましたが、主体的な授業や討論、批評、鑑賞などのトレーニングを通じて、少しずつですが、鑑賞した時に分析できる様になってきました。

 

私にとって1ゼメスターで出会ったコロキウムを通じ、他人の作品の見方、また自分自身の作品の形を大きく変えることになりました。 

ミュンスター大学に入学した当初の作品

入学した当初の作品/写真提供:Moriyama Minori

えば入学して当初のころは自分の作品に対する考えを発表したこともなかったので、作品に対する考え方があやふやでした。

一見ミニマリズムの様なスタイルに見えることから、他人には誤解を招く事もあったり、また独りよがりで面白みのない作品と捉えられるものでした。

一方、下で紹介している作品は新入生過程の修了直前の作品です。

まだまだ発展途上ではありますが、自分がやりたいことと表現の差を様々な方法で埋めることができるようになってきました。

ミュンスター芸術大学にてObereich終了直前作品

新入生過程終了直前の作品/写真提供:Moriyama Minori

また基礎課程の間に必修の単位があり、2つの美術史や美術批評の基礎を学ぶ座学と1つの実技コースを取る必要がありました。

実技コースをとると、その工房内にある道具や機会の使い方や基本的な制作の基礎などをプロから教わることができ、その後は工房職員に声をかければ自分で専門的な機械などを自由に使えるようになります。

日本の学校では先輩から何と無く教わるような危険性などもことを事細かに知ることができ、私自身1度日本で学んだことがあったことでも新しい学びがありました。

授業で使っていた資料/写真提供:Moriyama Minori

また1、2学期中に必修で取った「美術史や批評の基礎の授業」や、「有名な美術論文を読んで考察する授業」などは、美術全体の概要や、美術を勉強する為に必要な事を学べたと思います。

日本の大学時代では知識の断片的な授業が多く、美術全体を学ぶ授業が少なかったので、それらを学べた事、これまで自分の中にあったバラバラの知識が互いに繋がり、美術史の地図を描けるようになった瞬間でした。

猛烈に忙しかった2学期目と作品の幅が広がった3学期目

2ゼメスター、基礎課程終了前には試験があり、学校のほぼ全ての教授が揃って新入生過程の作品を見て回ります。多くの学生は試験前にその教授のクラスのコロキウムに参加し、どのクラスに入りたいかを決める事になります。

ミュンスター芸術大学のアトリエ話し合いスペース

アトリエ話し合いスペース/写真提供:Moriyama Minori

さらに、この頃になると急いで新入生過程の学生を基礎課程に適応できるような一人前のアーティストにしようと教授の指導が急に厳しくなりました。

なので新入生過程での制作やコロキウムも教授の厳しさと比例して忙しくなり、それと同時に色々なクラスに参加することになり、やることだらけで本当に頭がおかしくなるかと思いました。

 

クラス参加のためには、試験に合格して教授からサインをもらう必要があります。

誰にもサインをもらえない場合、不合格となり新入生過程に取り残される事になるので、この学期は本当に忙しかったです。

3ゼメスターからは専門過程のアトリエ研究としてそれぞれの教授が組織するクラスに所属します。

私の入ったクラスの教授は舞台芸術の俳優や監督をやっていた経歴があり、クラスの雰囲気も独特で学生の中には絵画や彫刻に限らず、本を書いたり、映像、パフォーマンス、インスタレーションなど様々な事に取り組む人たちもいました。

その中で過ごすうちに私自身、彫刻や立体作品であるということにこだわらなくなりました。

学期の終わりにあるRundgang(ルンドガング:学校全体で行う展示)ではパフォーマンスを2つ、ビデオインスタレーションを1つ出品してました。

3ゼメスター目の終わりに改めて自分の作品の幅が広がった事を感じました。

4学期目はもっと主体的に自分の学びたい事を学んでいった

現在4ゼメスター目ですが、今は積極的に座学の授業や校外学習に参加しています。

日本の学校では日本語訳を探して読んでいた情報などが、ドイツ語や英語で読むようになったため、アクセスが容易になり、今は知識をつけることが楽しくてたまらない感じです。例えばこの前はルール地方4都市を会場とする大規模なアートフェスティバルに行き、クラスをまたいで色々な学生と作品や展示のテーマについて意見を交換できました。

下で紹介している作品はこのゼメスターに作成したものです。

作品の制作はまた少し形が変わりました。作ったものがパフォーマンスのためのセットになるのは嫌だったので、もう少し物や現象自体を大事にして制作をしています。



2年間ドイツの芸術大学に通って成長したこと、変わったこと、気づいたこと

2 件のコメント

  • はじめまして。
    娘の海外大学進学を希望する母です。

    長女が高校三年生。
    芸術系の大学進学・受験真っ盛りです。

    妹のグローバルな学校の影響もあり、
    保護者の私達と長女も海外への興味が湧き、
    色々と海外への進学について情報収集をしております。
    しかしながら、我が家は低所得家庭。
    はじめは短期の留学にチャレンジ!として
    日本の奨学金システム『トビタテ留学JAPAN』
    への応募にチャレンジし、そのチャンスを得れたのですが、コロナ禍で支給対象として渡航が難しく
    なってしまいました。

    本格的に海外への留学には、どうすれば低所得家庭の子供でも、チャレンジする事ができるのか、仕事の合間をぬって、インターネット上でここまで辿りつきました。

    この記事を読み、ドイツの大学についてもっと深掘りをしたいと思いました。

    イギリスのロンドン芸術大学は、大学出願前に、1年間の芸術系の学校を出ていなければならないようですが、ドイツでも同様なのでしょうか。
    高校卒業後、大学へとはいかないのでしょうか。

    ドイツ芸術系大学へ出願するまでの詳しい内容の紹介などあれば嬉しいです。

    • 管理人の井上です。

      こちらのコメント欄に書かれた内容は、著者の方へ直接通知が届かないので、記事内あるSNSリンクから直接執筆者へ質問していただければと思います。

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