日本人看護師の私がドイツの看護師免許を取得するまで

ドイツで看護師になりたい人、国際的に看護師として活躍したい人に読んでほしい。ドイツで看護師になるために、私が経験したすべてをお伝えします。

6か月に及ぶ病院実習と講義はとっても忙しい

看護学校の様子/提供:Yoko

看護学校のクラスメート達/提供:Yoko

上記でも紹介したドイツの職業プログラムを受講する条件は、審査によりドイツで看護師資格取得可能と認定された者、ドイツ語習得レベルがB1以上の者ということでした。ドイツ語B1のために通った語学学校は記事の後半で紹介し、ここで簡単に私が受講した職業プログラムの内容を説明します。

看護師になるための職業認定プログラム(Praxisseminar Pflege)の講義と実習
  • 実施場所:看護学校(講義受講と口頭試験)、総合病院(実習と実技試験)
  • 期間:6ヶ月
  • 内容:講義と実習(各3ヶ月)+ 看護師国家試験(実技と口頭試験)

教員、講師による講義:看護概論、看護理論、医療倫理、看護技術(医療処置においての 清潔操作)、医療における法律(ドイツの健康保健システム、医療現場での医療従事者の医療行為における法的順守、個人情報の守秘義務)、ドイツ語による記録方法について、内科、外科、産婦人科、領域の各疾患の病態や診断、治療法と看護について

  • 実習場所:総合病院の内科、外科病棟        
  • 費用:無料(試験代も含む)
  • 受講者:12名

看護学校での講義と毎日の猛勉強

看護学校は私の住む隣の市にあり、毎朝電車で片道1時間半かけて通学し、3ヶ月間、月曜日~金曜日、8時か~15時まで授業を受講しました。

日本人の私を含め参加者は12名で、アフガニスタン、イラン、イラク、シリア、ウガンダ、ゼルビア、アルバニア、インド、という様々な国籍で、年齢、性別、これまでの職業経験、ドイツの看護師免許を取得する理由もそれぞれ違いましたが、共通点は本国で看護職に就いていたということでした。

 

授業は全てドイツ人教員と講師によりドイツ語で行われました。医療の専門用語をドイツ語だけでなくラテン語で習い、理解しなくてはならず授業についていくだけでも大変でした。

授業後は自宅で毎日4~5時間予習、復習に時間をあて、週末の休みは1日中家で勉強をしていました。常に専門書(辞書のようにすごく分厚く重い)を持ち歩いていたことから他の受講者からかわれたりもしましたが、気にせずマイペースで学習に取り組んでいました。

 

6ヶ月後に国家試験を控えていること、受験は2回しかチャンスがないということが私にとって大変プレッシャーでした。そんなストレスを抱えた私を夫は時に調べ物を手伝ってくれたり、家事を全て引き受けてくれたりいろいろサポートしてくれました。

 

病院実習の中身とドイツだから苦労したこと

実習病院は3か所の病院で実施され、12名の参加者はそれぞれの病院に振り分けられました。私はキリスト教系の500床程度の総合病院の外科病棟に配属され、月曜日~金曜日、7時30~から16時まで(8時間実習+休憩30分間)で実習を実施しました。

 

内容は術前の処置、術後の患者の清拭、おむつ交換、ドレーン管理、創傷処置、血糖値測定、点滴、インシュリン注射や内服薬の投薬、カルテの記録などで、その日の勤務の看護師の指示を受け看護業務を行いました。

 

日本の看護実習では一人の患者を受け持ち、看護計画を立てじっくり患者さんとコミュニケーションを取りながら看護を実施し、記録という流れで実践の看護を学習することに重点が置かれていますが、ドイツでは実習生は看護師と同様に業務を行うことが教育とみなされていることを知り驚きました。

 

私は日本で働いた経験があるので業務そのものは行えますが、ドイツの看護師資格の無い身で、責任のある業務を実施することに対しての不安があり、医療事故を起こさないよう常に細心の注意を払っていました。状況によっては有資格者の看護師が実施したほうが安全であると思ったときは、その旨を伝え代わってやってもらうこともありました。

 

ドイツ語でのコミュニーケーションですが高齢で、耳が聞こえにくい、認知症のある患者の場合、ドイツ語で話しかけても通じないこともあり、筆談や家族を通してコミュニーケーションを取ることもありました。また外国人の患者(シリアからの移民など)で全くドイツ語を話せず、身振り、手ぶりするも理解が得られずどうにも意思の疎通が図れない場面にも遭遇しました。

 

また病棟の看護師との関わりですが、日本人の実習生の受け入れは初めてということで大変珍しがられました。日本の看護師の仕事について、ドイツの看護師の仕事との違いなどもよく聞かれました。看護師や他の実習生の多くが、スラングや口語のドイツ語で話すので私は時に理解できないことや聞き間違えることもあり、コミュニケーションを図ることの難しさを大変感じました。



ドイツで看護師になりたい人、国際的に看護師として活躍したい人に読んでほしい。ドイツで看護師になるために、私が経験したすべてをお伝えします。

11 件のコメント

  • はじめまして。タイトルを見て「すごい人がいるんだなあ」と思って、拝読いたしました。YOKOさんと逆のケースなのですが、私は、ドイツ人看護師さんが日本で看護師になるのをサポートするかもしれない日本語教師です。

    日本が外国人看護師を受け入れているケースは、EPA(経済連携協定)によるインドネシア人、フィリピン人、ベトナム人という特別ものと、外国人の看護師で日本語能力試験N1を持っていてさらに、母国での習得単位が日本の看護過程に充分足ると厚労省が認めた場合で、ほとんどの場合が中国人と聞いています。

    どちらも私は携わったことがあるのですが、ドイツ人は初めてです。できるかどうか、これからやってみます。

  • はじめまして。
    とても参考になり、励みにもなりました。
    ありがとうございます。
    情報を集め始めたばかりなのでわからないことだらけです。
    日本から自分で情報を集めるだけでは限界があります。
    留学のエージェントを利用した方がいいのでしょうか?
    おすすめのエージェントがあれば教えていただきたいです。
    よろしくお願いします。

    • Hirokoさんこんにちは。私のWebサイトに御訪問下さって有難うございます。Hirokoさんから、info@yoko-nishijo.de宛にメールを頂いたと思うのですがいかがでしょうか?記載されていたメール先に返信したのですが、メールフェイラーで送れない状況です。申し訳ございませんが、再度メールを送っていただけると幸いです。
      留学エージェントについてですが、私自身利用したことが無いので残念ながらわかりません。私の経験上、看護師の免許を取得する前段階の書類の手続きなどで、言葉の問題やドイツの役所は日本のように親切ではないこと、又いろいろな情報も不確実であり、いかに正しい情報を得て進んでいくか大変苦労と時間を要しました。幸いなことに、私の場合夫がドイツ人であり言葉以外にも、ドイツ社会でどのようにコミュニケーションを取りこのような問題に向き合って対処していくべきか助言を受けることが出来て、ホントに助けてもらいました。一人でしたらもっと時間がかかっていたと思うし、中途で断念していたかもしれません。本文では記載していませんが、この職業訓練6ヶ月コースを受ける以前に、いろいろな経験をしました。
      何件か、ドイツの看護学校、また私営の職業訓練コースに問い合わせしたり、実際に面談に行ってきました。日本の看護師免許があるにもかかわらず、3年間老人ホームや病院で働きながらAusbildung することをすすめられたりしました。これは、ドイツが看護師不足で安い給料で学生をAusbildungという形で雇い入れることが出来るし、学費もそこから支払われるので学校も安定して収入が得られます。また学校側はさらにドイツ政府からいくらかの援助金が出るので外国人の看護師を入れたがるわけです。日本で受けた看護教育はドイツより上ですので、言葉以外は自信を持っていただきたいです。私の経験から3年間Ausbildung を受ける必要はないということです。このように、外国人向けの職業訓練の収益を利用する悪徳業者もいるのでホント気を付けて下さい。加えて申しあげておきますが日本人だから安全ということもありません。
      私でお手伝いできることがありましたら、遠慮なくご相談下さい。

      YOKO Healthcare Consulting:http://www.yoko-nishijo.de/又はwww.yoko-nishijo.com
      webサイト内のコンタクトフォームから、又はinfo@yoko-nishijo.deに御連絡下さい。

      • こんにちは。
        私も看護師免許の切り替えがしたく、yokoさんに色々うかがいたいのですが、こちらから連絡するのでよいのでしょうか。

        切り替えに看護師の臨床年数の条件はありますか。

        ご連絡お待ちしております。

        • 御質問、御相談につきましては下記連絡先に御連絡下さい。
          info@yoko-nishijo.com (info@yoko-nishijo.deから変更しています)
          こちらに御連絡後、返信がありませんでしたら再度こちらに書き込みお願いします。

          YOKO Healthcare Consulting
          Yoko Nishijo

  • はじめまして。今年5月に決心し、子ども2人を連れてドイツ移住作戦を決行中の看護歴は5年のシングルマザーのSternです。在独3か月になり、もうすぐ外人局にてTerminの期日が来るので、これから滞在ビザ申請をしていくところです。さて、渡独後2つ目の語学コースが終わり、隙間時間ができる日に合わせ、VHSで知り合った参加者にAnerkennungを親身に手伝ってくれると教えてもらっていたZWDでTerminを取っていました。日本にいる時にドイツの市役所に問合わせ、親切にも市役所から別の役所へ、そこからまた別の所へと点々と繋いでくれて色々情報は得ていたものの、自分の中で朧げなイメージしか掴めず宝の持ち腐れでしたが、運良くYokoさんのブログに辿り着き、拝見・拝読させて頂いて、ドイツで看護師になる道とはいかなる流れかを把握できていたことが功を奏し、今回のZWDでの相談で説明を受けるうちに自分の理解に繋がりました。また、Antrag用紙を事前に用意し持参できたので、申請方法の説明に集中でき時間も有効活用できました。手元にあるものでとりあえず申請するつもりですが、翻訳者に依頼してやり取りが果たして私の語学力でできるのか、支払える相場なのかもわかりませんが、可能性はたどっていこうと思っています。とりあえずここまで来れたので、Yokoさんに感謝の言葉を伝えておきたいと思いコメントさせて頂きました。どうもありがとうございます。

    • Sternさん、こんにちは。私のブログが少し御役に立てたようで良かったです。お子さんもお連れということで大変だと思いますが、海外生活の経験は親子共に貴重な体験になりますので、頑張ってくださいね!応援しています!!
      ところで、書類の翻訳に関してですが必ずドイツ政府認定の翻訳者さんによる翻訳が必須です。そうでなければ認められません。私はDüsseldorfの日本人の翻訳者さんに御願いしました。なぜなら、日本語からドイツ語に翻訳することになるので。学校の証明書や就業証明書等かなりの枚数、翻訳を依頼したので料金は高くかかりました。料金の設定ですが、文字数で決まります。注意点ですが、翻訳の内容は必ず自分でも確認して下さい。翻訳の専門家でも間違うことはあります。たまに本文にそぐわない内容で解釈し、表現されている場合があります。

      私でお手伝いできることがありましたら、いつでもご相談下さい。

      YOKO Healthcare Consulting:http://www.yoko-nishijo.com/

  • お返事が遅くなりまして申し訳ありません。筆者のYokoです。Naokiさんは作業療法士で、ドイツででも免許を取得し作業療法士として働きたいということですが、私は看護師ですが私と同じ手順んで資格を取得することは可能だと思います。文中で、ご紹介したIQネットワークでお聞きになるのが良いかと思います。Naokiさんの渡独されている状況(滞在許可など)が分からないので何とも言えませんが、私で出来ることがあればいつでも御連絡下さい。現在、私はヘルスケアコンサルティングとして活動しておりますのでそちらをご案内させていただきます。
    YOKO Healthcare Consulting:http://www.yoko-nishijo.de/

  • ブログ読みました!
    私も今ドイツに来てちょうど一年、VHSでドイツ語を習っている者です!

    これから丁度看護師のAnerkennungをはじめるところでしたので、
    今後の流れがとてもわかりやすく書いてあるのをみて本当にタメになりました^^

    日本のカリキュラムなら、Voll-Anerkennungのお返事が来るのかなと勝手に思っていたので、
    そんなに長い時間の実習時間が課せられることもあるときいてとても驚いています。

    さて、質問なのですが、
    日本語からドイツ語の看護師免許書き換えに伴って、
    ドイツ語B2って必ず必須だと思っていたのですが、
    筆者さんのご経験では、

    まず看護出身校のカリキュラムなどを提出し、州から授業や実習分の不足・充足の判定が下って(6か月)から、
    ドイツ語B2の試験結果を提出する前に、
    職業訓練プログラムを受講されたということなのでしょうか?

    今の私のレベルでは、B2の試験が一番ネックになっているところでもあるので、
    とても時間がかかりそうだったものですから
    それ以外のことが先に済ませられるなら順序良くやっていきたいのです、、

    • 御返事が遅くなりすみません!日本の看護教育は、実習時間より医学的、看護的知識の習得に力を入れているのでドイツが求めている実習時間より短いはずです。おそらく、看護師さんも私と同様の御返事をいただくことになるかと思いますが。
      逆に、Theoritische Unterrichtsの単位はかなりあった為, 看護学校で授業を受ける必要はありませんでしたが、ドイツ語で再度学習する必要があると考え受講しました。私の同時期に、職業訓練を受けた受講生は皆、母国で看護師でしたが実習時間・Theoritische Unterrichtをドイツ政府の求める単位を満たしておらず必須でした。

      ドイツ語レベルに関してですが、州により求められるレベルが違うようです。私の受講した職業訓練プログラムは、最低B1は必須でした。ただ、実技試験、口頭試験は全てドイツ語での読み・書き・スピーキングが求められるのでB1以上はあった方が良いかと思います。

  • ブログ拝見させて頂きました。
    とても貴重な実体験が書かれており、勉強になりました。
    僕は日本で作業療法士の仕事をしており、
    現在ドイツで語学学校に通っています。
    僕も将来ドイツで作業療法士として医療の現場で
    勤務したいと考えています。
    作業療法士の職種もドイツでの免許切り替えや働くことは可能でしょうか?
    医療現場で働いている日本人や現地の方との
    接点がまだ見つからず、模索しています。
    何かアドバイス等頂けると幸いです。

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