日本人看護師の私がドイツの看護師免許を取得するまで

ドイツで看護師になりたい人、国際的に看護師として活躍したい人に読んでほしい。ドイツで看護師になるために、私が経験したすべてをお伝えします。

講義と実習を終えついにドイツの看護師国家試験

6ヶ月の講義と実習のプログラムが終了後、ドイツの看護師国家試験を受けなくてはいけません。通常のドイツの看護師国家試験は実技試験と口頭試験筆記試験がありますが認定プラグラムの場合は実技試験と口頭試験のみの受験でした。

実技試験は病院指導者と看護教員の2名が試験官で朝の9時から12時の3時間行われました。私が受験した時の実技試験は次の順番で実施されていました。

実技試験のながれ
  1. 試験当日に受け持ち患者を指導者から提示される
  2. カルテより患者の情報収集
  3. 看護計画立案
  4. 看護処置で使う物品を準備し、患者に実施する内容を説明し承諾を得る
  5. 試験官に患者紹介と看護計画をプレゼンテーション(試験官より質問あり)
  6. 試験官の立会いのもと、看護処置の実施
  7. 実施した内容をカルテに記録し、試験官に報告する
  8. 終了後、合否の結果の発表

 

試験前夜は緊張であまり眠れませんでした…

 

ドイツは電車の遅延がたびたびあるので、試験におくれないよう少し時間の余裕をもって病院にむかい、病院内で試験の時間まで待機していました。

試験では筆記用具以外の持ち物は禁止されていて(携帯電話、電子辞書など)私は筆記用具のみを持ち、実習病棟に試験開始時間10分前に行きました。

 

試験官の指導者は病棟の責任者と実技試験について打ち合わせをしていました。試験開始時間の9時になり病院指導者から受け持ち患者名を伝えられました。その後、1時間半の時間が与えられ、カルテから患者の情報収集をして、看護計画を立て処置に必要な物品を揃えました。

 

試験中に失敗がないように何度も頭の中で処置の手順を思い返しました。そして定刻になり、試験官2名に患者紹介と看護計画の説明し、ともに患者の部屋に入室し、患者に処置の説明が行われました。50代の男性で、ヘルニア手術後の患者でしたが術後の経過は良好で、心身共に安定しており、コミュニケーションを取りながら創傷の処置を適切に行うことが出来ました。

 

翌日に退院予定だったので日常生活の過ごし方についての退院指導も実施しました。その後、実施した内容をカルテに記載し、試験官に報告し、試験は終了となりました。

 

試験官から試験の感想を聞かれ、

「緊張したけれど思うようにできた」

と伝えると試験官二人は笑顔で合格したことを私に伝えました。

その後、病院の招待で院内のカフェテリアで試験官とともに昼食を取ることになりましたが、試験を終え、合格した解放感と疲労感で私は全く食欲がなくコーヒーのみをいただきました。

夫にも試験の合格を報告し、喜んでくれました。

「まず第一関門の試験はクリアーできた!」

という喜びと自信で残りの実習は気負いなく取り組むことが出来ました。ただ残念ながら1名の受験者は不合格でした。

 

国家試験の口頭試験は医師を含む6人の試験官によって行われました。

口頭試験について
  • 場所 看護学校
  • 試験官 6人 (医師 1名、役所より職員1名、教員4名)
  • 試験日時 2日間(受験者12名)、各受験者の試験時間1時間
  • 試験内容 内科、外科、産科の20疾患の中から出題、状況設定形式で疾患、検査、治療、看護についての質疑応答

口頭試験は2日間にわたり看護学校で実施されました。試験会場はかなり厳粛な雰囲気で

受験者は試験時間まで指定された待合室で待機し、他の受験者と会うことは許されませんでした。私の試験は2日目に予定されていて、試験当日は少し早めに会場に行き、待機室で試験に備えて準備した資料を再度読み返していました。

 

自分の時間になると試験の部屋に案内されて、1枚の用紙が手渡されました。見ると文章が書かれており

「この文章を15分間で読み、理解するよう」

に指示されました。

 

腎臓疾患患者の入院までの経緯や入院中の様子が記載されていました。

15分経過後、他の部屋に案内され入室するとそこには6人の試験官がいました。用意された席に着くと試験官から挨拶があり試験が開始されました。

 

最初に文面に記載されていた患者について説明するように言われ、出来るだけゆっくり、はっきり、大きな声でしっかりと各試験官の目を見ながら話をしました。また、出来る限りたくさん話すように努めました。その後、3人の試験官より質問がありました。

 

1名は医師で疾患や診断、検査方法、治療について聞かれました。また2名の教員からは看護について質問がありました。わからない質問に関しては、わからないことを伝え再度説明をしてもらいました。緊張していたものの試験は思っていた以上にスムーズに進み、終了となりました。

 

終了後、受験者、学校教員、各病院の指導者、このプラグラムを主催したMiebeg-Institut Medizinの職員と懇親会が催され、それぞれ受験者の口頭試験の合否と看護師国家試験の合否が発表されました。私の結果は口頭試験と実習試験の両方が合格し、看護師国家試験を無事合格となりました。残念ながら2名の受験者は不合格でした。

その後、9月に犯罪証明書と口頭試験と実習試験の合格証を保健所に申請し1ヶ月後に正式な看護師免許証を取得しました。そして、就職活動を行い12月末に内定、2019年1月から勤務し現在に至ります。



ドイツで看護師になりたい人、国際的に看護師として活躍したい人に読んでほしい。ドイツで看護師になるために、私が経験したすべてをお伝えします。

10 件のコメント

  • はじめまして。
    とても参考になり、励みにもなりました。
    ありがとうございます。
    情報を集め始めたばかりなのでわからないことだらけです。
    日本から自分で情報を集めるだけでは限界があります。
    留学のエージェントを利用した方がいいのでしょうか?
    おすすめのエージェントがあれば教えていただきたいです。
    よろしくお願いします。

    • Hirokoさんこんにちは。私のWebサイトに御訪問下さって有難うございます。Hirokoさんから、info@yoko-nishijo.de宛にメールを頂いたと思うのですがいかがでしょうか?記載されていたメール先に返信したのですが、メールフェイラーで送れない状況です。申し訳ございませんが、再度メールを送っていただけると幸いです。
      留学エージェントについてですが、私自身利用したことが無いので残念ながらわかりません。私の経験上、看護師の免許を取得する前段階の書類の手続きなどで、言葉の問題やドイツの役所は日本のように親切ではないこと、又いろいろな情報も不確実であり、いかに正しい情報を得て進んでいくか大変苦労と時間を要しました。幸いなことに、私の場合夫がドイツ人であり言葉以外にも、ドイツ社会でどのようにコミュニケーションを取りこのような問題に向き合って対処していくべきか助言を受けることが出来て、ホントに助けてもらいました。一人でしたらもっと時間がかかっていたと思うし、中途で断念していたかもしれません。本文では記載していませんが、この職業訓練6ヶ月コースを受ける以前に、いろいろな経験をしました。
      何件か、ドイツの看護学校、また私営の職業訓練コースに問い合わせしたり、実際に面談に行ってきました。日本の看護師免許があるにもかかわらず、3年間老人ホームや病院で働きながらAusbildung することをすすめられたりしました。これは、ドイツが看護師不足で安い給料で学生をAusbildungという形で雇い入れることが出来るし、学費もそこから支払われるので学校も安定して収入が得られます。また学校側はさらにドイツ政府からいくらかの援助金が出るので外国人の看護師を入れたがるわけです。日本で受けた看護教育はドイツより上ですので、言葉以外は自信を持っていただきたいです。私の経験から3年間Ausbildung を受ける必要はないということです。このように、外国人向けの職業訓練の収益を利用する悪徳業者もいるのでホント気を付けて下さい。加えて申しあげておきますが日本人だから安全ということもありません。
      私でお手伝いできることがありましたら、遠慮なくご相談下さい。

      YOKO Healthcare Consulting:http://www.yoko-nishijo.de/又はwww.yoko-nishijo.com
      webサイト内のコンタクトフォームから、又はinfo@yoko-nishijo.deに御連絡下さい。

      • こんにちは。
        私も看護師免許の切り替えがしたく、yokoさんに色々うかがいたいのですが、こちらから連絡するのでよいのでしょうか。

        切り替えに看護師の臨床年数の条件はありますか。

        ご連絡お待ちしております。

        • 御質問、御相談につきましては下記連絡先に御連絡下さい。
          info@yoko-nishijo.com (info@yoko-nishijo.deから変更しています)
          こちらに御連絡後、返信がありませんでしたら再度こちらに書き込みお願いします。

          YOKO Healthcare Consulting
          Yoko Nishijo

  • はじめまして。今年5月に決心し、子ども2人を連れてドイツ移住作戦を決行中の看護歴は5年のシングルマザーのSternです。在独3か月になり、もうすぐ外人局にてTerminの期日が来るので、これから滞在ビザ申請をしていくところです。さて、渡独後2つ目の語学コースが終わり、隙間時間ができる日に合わせ、VHSで知り合った参加者にAnerkennungを親身に手伝ってくれると教えてもらっていたZWDでTerminを取っていました。日本にいる時にドイツの市役所に問合わせ、親切にも市役所から別の役所へ、そこからまた別の所へと点々と繋いでくれて色々情報は得ていたものの、自分の中で朧げなイメージしか掴めず宝の持ち腐れでしたが、運良くYokoさんのブログに辿り着き、拝見・拝読させて頂いて、ドイツで看護師になる道とはいかなる流れかを把握できていたことが功を奏し、今回のZWDでの相談で説明を受けるうちに自分の理解に繋がりました。また、Antrag用紙を事前に用意し持参できたので、申請方法の説明に集中でき時間も有効活用できました。手元にあるものでとりあえず申請するつもりですが、翻訳者に依頼してやり取りが果たして私の語学力でできるのか、支払える相場なのかもわかりませんが、可能性はたどっていこうと思っています。とりあえずここまで来れたので、Yokoさんに感謝の言葉を伝えておきたいと思いコメントさせて頂きました。どうもありがとうございます。

    • Sternさん、こんにちは。私のブログが少し御役に立てたようで良かったです。お子さんもお連れということで大変だと思いますが、海外生活の経験は親子共に貴重な体験になりますので、頑張ってくださいね!応援しています!!
      ところで、書類の翻訳に関してですが必ずドイツ政府認定の翻訳者さんによる翻訳が必須です。そうでなければ認められません。私はDüsseldorfの日本人の翻訳者さんに御願いしました。なぜなら、日本語からドイツ語に翻訳することになるので。学校の証明書や就業証明書等かなりの枚数、翻訳を依頼したので料金は高くかかりました。料金の設定ですが、文字数で決まります。注意点ですが、翻訳の内容は必ず自分でも確認して下さい。翻訳の専門家でも間違うことはあります。たまに本文にそぐわない内容で解釈し、表現されている場合があります。

      私でお手伝いできることがありましたら、いつでもご相談下さい。

      YOKO Healthcare Consulting:http://www.yoko-nishijo.com/

  • お返事が遅くなりまして申し訳ありません。筆者のYokoです。Naokiさんは作業療法士で、ドイツででも免許を取得し作業療法士として働きたいということですが、私は看護師ですが私と同じ手順んで資格を取得することは可能だと思います。文中で、ご紹介したIQネットワークでお聞きになるのが良いかと思います。Naokiさんの渡独されている状況(滞在許可など)が分からないので何とも言えませんが、私で出来ることがあればいつでも御連絡下さい。現在、私はヘルスケアコンサルティングとして活動しておりますのでそちらをご案内させていただきます。
    YOKO Healthcare Consulting:http://www.yoko-nishijo.de/

  • ブログ読みました!
    私も今ドイツに来てちょうど一年、VHSでドイツ語を習っている者です!

    これから丁度看護師のAnerkennungをはじめるところでしたので、
    今後の流れがとてもわかりやすく書いてあるのをみて本当にタメになりました^^

    日本のカリキュラムなら、Voll-Anerkennungのお返事が来るのかなと勝手に思っていたので、
    そんなに長い時間の実習時間が課せられることもあるときいてとても驚いています。

    さて、質問なのですが、
    日本語からドイツ語の看護師免許書き換えに伴って、
    ドイツ語B2って必ず必須だと思っていたのですが、
    筆者さんのご経験では、

    まず看護出身校のカリキュラムなどを提出し、州から授業や実習分の不足・充足の判定が下って(6か月)から、
    ドイツ語B2の試験結果を提出する前に、
    職業訓練プログラムを受講されたということなのでしょうか?

    今の私のレベルでは、B2の試験が一番ネックになっているところでもあるので、
    とても時間がかかりそうだったものですから
    それ以外のことが先に済ませられるなら順序良くやっていきたいのです、、

    • 御返事が遅くなりすみません!日本の看護教育は、実習時間より医学的、看護的知識の習得に力を入れているのでドイツが求めている実習時間より短いはずです。おそらく、看護師さんも私と同様の御返事をいただくことになるかと思いますが。
      逆に、Theoritische Unterrichtsの単位はかなりあった為, 看護学校で授業を受ける必要はありませんでしたが、ドイツ語で再度学習する必要があると考え受講しました。私の同時期に、職業訓練を受けた受講生は皆、母国で看護師でしたが実習時間・Theoritische Unterrichtをドイツ政府の求める単位を満たしておらず必須でした。

      ドイツ語レベルに関してですが、州により求められるレベルが違うようです。私の受講した職業訓練プログラムは、最低B1は必須でした。ただ、実技試験、口頭試験は全てドイツ語での読み・書き・スピーキングが求められるのでB1以上はあった方が良いかと思います。

  • ブログ拝見させて頂きました。
    とても貴重な実体験が書かれており、勉強になりました。
    僕は日本で作業療法士の仕事をしており、
    現在ドイツで語学学校に通っています。
    僕も将来ドイツで作業療法士として医療の現場で
    勤務したいと考えています。
    作業療法士の職種もドイツでの免許切り替えや働くことは可能でしょうか?
    医療現場で働いている日本人や現地の方との
    接点がまだ見つからず、模索しています。
    何かアドバイス等頂けると幸いです。

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